フリーランスとして独立すると、心配になるのが社会保険や夫の扶養から出ることですね。国保は高いと聞くし、他に選択肢はないのでしょうか。私もハンドメイド作家として独立し、保険が払えるか不安を抱えました。「文芸美術国民健康保険(文美国保)」に入るメリット、条件、入るために気を付けるポイントをまとめました。
■ 国保以外にフリーランスが入れる保険の選択肢
1. 「扶養に入る」
もし配偶者(旦那さんなど)が会社員・公務員なら、その扶養に入れる可能性があります。
【条件】
- 年収130万円未満(地域や保険組合によっては106万円未満の場合も)
- 仕事の実態が「扶養対象」と認められること(事業の規模によっては不可)
📝 ハンドメイド作家さんは「売上」ではなく「利益(経費を引いた金額)」で判断されます。
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2. 「任意継続被保険者(前職の社会保険を継続)」
任意継続被保険者とは、会社を辞めたあとも、最大2年間は同じ社会保険に入り続けることができる制度です。
【メリット】
- 家族もそのまま保険証を使える
- 場合によっては国保より保険料が安いことも
【デメリット】
- 全額自己負担(会社が払っていた分も自分で払う)
- 2年しか使えない
3. 「文芸美術国民健康保険(文美国保)」
「文芸美術国民健康保険(文美国保)」とは、ハンドメイド作家さんも入れる可能性がある「業種別の国保」のことです。
【対象】
- 作家、デザイナー、イラストレーター、カメラマン、漫画家、工芸作家など
- 文美協(文芸美術国民健康保険組合)に加入している団体の会員になる必要あり
【ポイント】
- 保険料が所得に関係なく一律(子どもがいる世帯は特にお得になる可能性あり)
- 出産手当金・傷病手当金はない
- 審査あり
「工芸作家」として認められれば、ハンドメイド作家さんも申請できるケースがあります。
4. 「会社を作って社会保険に加入」
法人(合同会社・株式会社)を設立すれば、代表一人でも社会保険(健康保険+厚生年金)に加入できます。
【メリット】
- 国保より手厚い
- 将来の年金額もアップ
- 法人にすることで節税メリットが出る場合も
【デメリット】
- 法人設立のコストや手続きが必要
- 社会保険料はけっこう高め
保険の種類 | 入れる人 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
国民健康保険(国保) | 基本的に全員 | 手続きが簡単 | 所得によっては保険料が高い |
扶養に入る | 配偶者の会社員などがいる | 保険料ゼロ | 年収制限あり(130万円 or 106万円未満) |
任意継続 | 会社を辞めたばかりの人 | 条件によっては安く済む | 2年までしか使えない、全額自己負担 |
文芸美術国民健康保険(文美国保) | 工芸作家・イラストレーター・デザイナーなど | 保険料一律でお得な場合あり、家族も加入可 | 加入団体に所属が必要、審査あり |
法人化+社会保険 | 法人を設立する人 | 手厚い保障、将来の年金額アップ、傷病手当金や産休手当あり | 手続きが複雑、コスト(社会保険料+法人維持費)がかかる |
「文芸美術国民健康保険(文美国保)」に入るメリット
ここからはハンドメイド作家さんも入れる可能性の高い「文芸美術国民健康保険(文美国保)」についてご紹介していきます。
1. 【保険料が一律】所得が多くても安定して支払える
国民健康保険は所得によって保険料が変わる仕組みですが、
文美国保は加入者全員が同じ保険料(定額)。
私が個人事業主として初めて確定申告した年は、売上が少なかったので国保の保険料も安かったんですが、翌年、少し売上が伸びたら一気に金額が上がってびっくり。
その点、文美国保は「売上が増えても保険料は同じ」なので、将来的に事業が成長しても安心です。
✔ 高所得でも保険料が爆上がりしない
✔ 年間の計画が立てやすい
特に「繁忙期と閑散期の差が大きい」という作家さんには、安定した支払いができるのは大きなメリットです。
2. 【家族も加入できる】家族分の保険料も一律でわかりやすい
文美国保は、本人だけでなく家族(被扶養者)も加入OK。
しかも、家族の人数によって追加される保険料も決まっているので、
「扶養内だからいくら」「扶養外だからいくら」と計算で悩まなくて済みます。
私の知り合いの作家さんは、夫婦で自営業+子ども2人の家庭ですが、国保より文美国保のほうがだいぶお得だったそうです。
3. 出産育児一時金や高額療養費などの制度はしっかりカバー
国保と同様に、文美国保でも以下のような制度が利用できます。
- 出産育児一時金
- 高額療養費制度
- 死亡時の葬祭費
ただし、「傷病手当金」「出産手当金(産休中のお金)」は社会保険にしかない制度なので、その点は注意が必要。
4. クリエイターとしての交流が増える
文美国保に入るには、組合に加盟している団体(協会など)の会員になる必要があります。
この「団体」によっては、作品展への出展チャンスがあったり、仲間との交流会があったりと、クリエイターとしてのつながりが広がるというおまけのメリットも。
実際に私も、活動の幅が広がっている作家仲間から「団体に入ったことで仕事のきっかけが増えた」という話をよく聞きます。
「文芸美術国民健康保険(文美国保)」に入る条件
加盟している団体に入る
文芸美術国民健康保険(文美国保)に入るためには、直接「文美国保」に申し込むのではなく、加盟している団体(組合員団体)に入会することが必要になります。
そして、この「団体」はかなりたくさんあります!
「デザイナー向け」「工芸作家向け」「イラストレーター向け」「フォトグラファー向け」など、ジャンルによって分かれています。
■ 文美国保に加入できる代表的な団体一覧
一部ですが、ハンドメイド作家さんにも関係ありそうなところをピックアップします。
団体名 | 特徴・対象 |
---|---|
日本工芸会 | 伝統工芸の作家さん向け(陶芸・染織・漆芸など) |
現代工芸美術家協会 | 現代アート寄りの工芸作家さん |
日本クラフトデザイン協会(JCDA) | クラフト、アクセサリー、ジュエリーなどの作家向け |
日本ジュエリーデザイナー協会(JJDA) | ジュエリーデザイナー専門 |
日本図案家協会 | 柄や模様、テキスタイルデザインなど |
日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA) | グラフィックデザイナー、アートディレクター |
日本イラストレーター協会(JILLA) | イラストレーター全般 |
日本写真作家協会(JPA) | フォトグラファー、写真作家向け |
日本漫画家協会 | 漫画家、コミック作家 |
このほかにもまだまだたくさんの団体があります。
一覧はこちら(文美国保の公式ページ):
👉 文芸美術国民健康保険組合 加盟団体一覧
実際に団体に入会するまでの流れ
実際に入会するまでの流れをざっくりとお伝えします。
- 各団体のホームページで「入会条件」をチェック
- 「入会申込書」や「作品写真」の提出
- 審査(団体によっては面接やポートフォリオ提出あり)
- 団体に入会 → 文美国保への加入手続き
「文芸美術国民健康保険(文美国保)」に受かるためのポイント
自分の作品に合いそうな団体が見つかって、申請しようと思う場合、受かりやすくするためのポイントはあるのでしょうか。
実際に申請した体験談を見ていきましょう。
染織作家Aさん(40代・女性)
加入団体:日本クラフトデザイン協会(JCDA)
私は、草木染めの布を使ったオリジナル服やストールを制作・販売しています。
個展やマルシェ出店などで少しずつ活動を広げ、気づけば年収が200万円を超えるように。
もともとは国民健康保険に入っていましたが、年によって売上が変動し、翌年の保険料が一気に上がってしまうのが大変でした。
同じ作家仲間から「文美国保っていう選択肢があるよ」と教えてもらい、調べてみたら日本クラフトデザイン協会が服飾・染織でもOKということを知りました。
応募時には、
- 作品写真(5点ほど)
- 制作歴(いつから、どんな活動をしているか)
- 直近の展示歴
などを書いて申請。
約1か月後に「正会員」でOKの連絡が来ました。
その後、協会の案内に従って文美国保に加入。
国保時代より月1万円以上安くなり、家族も加入できたのでかなり助かっています。
作品制作に集中できる環境が整ったし、協会内の作品展に参加できるチャンスもできました。
アクセサリー作家Bさん(30代・女性)
加入団体:日本ジュエリーデザイナー協会(JJDA)
金属や天然石を使った一点物アクセサリーを作っています。
ハンドメイドサイト(minne、Creema)と展示会で販売していますが、年々リピーターが増え、扶養から外れる年収になりました。
国保に切り替えたものの、保険料がとにかく高い!
調べてみたら、「文美国保は所得に関係なく一律」ということで、ジュエリー系の団体を探しました。
最初は「アクセサリー作家でも入れるの?」と不安でしたが、デザインから自分で考えて制作していることを説明し、
- 制作の過程がわかる写真
- デザイン画(ラフスケッチ)
- 完成品の写真
を提出。
審査のときに「ハンドメイドではなくデザイン重視の作品」と説明したのがよかったみたいで、スムーズに入会できました。
加入後は保険料も安定していて安心。
また、他のジュエリーデザイナーさんとの交流会があって、情報交換もできるようになりました。
テキスタイルデザイナーCさん(50代・女性)
加入団体:日本図案家協会
私は布にプリントするための柄デザイン(テキスタイルパターン)を仕事にしています。
直接制作するのはデザイン画までですが、これも「文芸美術」に該当することを知りました。
図案家協会は、染織作家さんも多く在籍しているので、迷わずここを選びました。
入会には
- 自分の作った柄デザインのポートフォリオ
- 仕事歴(どんな布に使われたか)
- 過去の展示参加歴
などを提出。
デザイン事務所に勤めていた頃の実績も評価してもらえたのがよかったようで、、特に問題なく加入できました。
国保時代より年間で10万円以上安くなったし、
テキスタイル関係の展示情報が協会内で回ってくるのもありがたいです。
洋服作家Dさん(40代・男性)
加入団体:日本クラフトデザイン協会(JCDA)
手作りのリネンシャツやワンピースを制作・販売しています。
もともとデザインもパターンもすべて自分でやっていて、個展も年に1〜2回開いています。
でも、ただ「洋服作ってます」だけではダメかも…?と思い、
・オリジナル性
・一点物へのこだわり
・制作工程の写真
・過去の展示や販売実績(作品の写真つき)
をまとめて応募。
審査では「クラフトとしての価値」をどうアピールするかが大事だと感じました。
加入後は、協会の年会費(1万円ちょっと)はかかるけれど、
国保時代より月に7,000円くらい安くなったので、年会費を払ってもプラス。
保険のためだけの加入…という気持ちでしたが、
実際は協会内の勉強会や展示会情報も役立っています。
まとめ:ハンドメイド作家も知っておきたい「国保以外」の選択肢
- 国保以外にも「扶養」「任意継続」「法人+社会保険」「文美国保」という選択肢がある
- 文美国保は、所得に関係なく保険料が一律で安心
- ハンドメイド作家さんも「工芸作家」として認められれば加入できる可能性がある
- 団体に入るためには作品写真や経歴が必要。審査ポイントは「オリジナル性」「一点物」「アート性」
私自身も保険料の高さに悩んだ経験があり、文美国保という道を知ったことで安心して制作活動を続けられるようになりました。
「国保が高くて困っている」「扶養を抜けるかもしれない」という方は、ぜひ一度、自分の作品ジャンルが文美国保の対象になりそうかチェックしてみてください。
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